よろしく哀愁

あーえーなーいーじかんがー、あーいーそーだーてるのさー!

郷ひろみも歌っておりますように、今回は、コロナ禍で会えないままあれよあれよと時が過ぎ、会えないまま結婚を成立させた私たちのこれまでの経緯をなるべくロマンチック仕立てでお届けしようと思います。調子に乗ってタイタニックばりの壮大なラブストーリーになったらすみません。それではどうぞ。

そもそもなのですが、私がシンガポールで就職した大手日系のメーカーが、ブラックもブラック、黒光しているほどブラックで。モラハラパワハラのオンパレードでした。毎日無謀な量の仕事をふっかけられ、朝8時から夜10時まで窓のない澱んだオフィスで働き続け、現地の上司には理不尽に怒鳴られ続け、心身ともに困憊しておりました。日系といえども部署に日本人はほとんどおらず、中華系マレーの現地人が牛耳っている環境。シンガポール人は優しいと聞いていたのですが、ここの会社特にここの部署に限ってはそんなステレオタイプは当てはまりません。私が現地採用の初の日本人、しかもシニアマネージャーとしての採用で目をつけられたのか、中華系マレーの意地悪男女二人のボスから完全なる新人イジメを受けておりました。しかもこいつらシングリッシュが強すぎて何言ってるのか本当にわからない。日本人駐在員の同僚が本社の人事に掛け合ってくれたりもしたのですが状況は改善されず、(この時点で本社もろくでもないこと確定、ここのメーカーの商品私は個人的に不買運動してます)私は鬱状態だったと思います。そんな状態で39度の熱が1週間くらい続き、咳が止まらなくなる時期もありました。これ、インフルの薬飲んでたけど今考えると多分コロナパンデミックのハシリだったんじゃないかと思ってます。シンガポールでいち早くコロナかかってたんだと思います。ディズニーで例えるならまさに継母と異母兄弟に虐められて仕事を押し付けられる可哀想なシンデレラ状態!しかも謎のウィルスにも苦しめられるシンデレラ!とても哀れです。しかし、ここで耐え抜くのがシンデレラですが、ご存知のように、私にそのような忍耐はありません。

おまえらがその態度なら私はさっさと辞めてやるぜ。私は渡星のきっかけになるビザが欲しかっただけなんだよ、違う会社に転職してやるわ、あばよ!

という感じで、辞表を叩きつけてやりました。これが、いわゆる背水の陣というやつです。この恐ろしさはこの時の私はまだ知りません。当然ですが、会社を辞めた私は就労ビザを剥奪されました。残された時間はわずか1ヶ月!でも大丈夫、私には根拠のない自信がありました。いざとなったら1回マレーシアにでも出て再入国して就活続ければいいし、って。

しかし、運悪く、この辺りから私はコロナの波にすっぽり飲み込まれてしまうのです。パンデミックが始まり、新規雇用は激減、外国人ビザサポートなんてとんでもない、先行き不透明な世界に巻き込まれていきました。最終面接まで進んだ会社に既に仮内定を頂いていたのですが、しばらくして担当者から、「断腸の思いですがこの度はビザのある方に...」とお断りを受けることになりました。腸が千切れるのは私の方だわ。と心で弱々しくツッコミました。どうやら帯同ビザ持ちの駐妻にそのポジションは流れてしまったようでした。くそー。いよいよやばい!と焦ってきたところに、満を辞して王子の登場です。キラキラキラリン〜(登場音)

王子「僕の家に一緒に住もう、君は今無職だし、最悪帰国しなくちゃいけなくなるリスクもある。(身分不相応な)高級コンドに住んでる君の家賃ももったいないでしょう?」

私「...だな。そうする。」

王子「ほら君の合鍵だよ、さあおいで!」

私「...ありがとう王子」

以上の会話をもって、私の居候生活がスタートしました。こうして高級コンドから一気にボロい1DKの二人暮らしが始まりました。

実はこうなる前から彼は心身ボロボロになっている私を気遣ってサポートしてくれておりました。帰りの遅い私のためにごはんを家に配達してくれたり(ウーバーに頼めば良い話)、サプリを買ってくれたり、心のケアのために相談に乗ってくれたり。弱っている時にする恋愛は良くないと言いますが、弱っている時に見放す冷たい人に比べたら、私は弱いものを助けてくれる人の方がずっと良いです。そんな甲斐あって私のHPはメキメキと回復していきました。後から知ったんですが彼の専門はメンタルヘルスだったそうなので、私はプロに相談に乗ってもらってたことになりますね、ラッキーでした笑。しかし職探しの見込みは無く、状況は悪くなる一方。こりゃ一旦マレーシアに飛ぶしかないなと思っていた矢先、近隣諸国が軒並みロックダウン(鎖国)を始めました。どうせ外出るなら一緒にバリに行こうよ、とうちの王子が囁き、そりゃ名案と私もそれに乗っかり、バリ旅行のチケットまで取ったのですが、その夢も束の間、インドネシアも例に漏れずロックダウンとなり、敢えなく計画倒れとなりました。この時APACの国をたくさん調べたのですが、ほぼ逃げられる場所はなく、唯一行けそうだったスリランカも旅行ビザがサスペンドされ、ゲームオーバー感満載。ここで一旦観念して私は自国の日本に帰ることにしました。2週間の滞在予定で帰国しましたが、帰国2日目に今度はシンガポール自体がロックダウンするニュースが飛び込んできました。新規入国が全面禁止となるルールだったので私は日本の滞在をたった2日間で切り上げて、慌ててシンガポールにトンボ帰りしました。私の着いたわずか5時間後には入国禁止の措置が取られたのでギリギリセーフとはこのことです。綱渡り感ハンパない!刺激的なライフ!幸い彼が正式な同居の契約を大家と交わしてくれていたので、14日間の隔離をホテルでは無くて彼の自宅ですることができました。(今は無理と思いますが当時はOKでした。) とは言ってもビザなし旅行者ステータスの私。いずれにせよ長期滞在はできません。1ヶ月の猶予のうちその半分は隔離生活。就活状況が好転するはずもなく、残酷にもその時は来ました。はい、本帰国。

当時はコロナの状況が不透明で、私たちは長くても半年くらいで収束するものと考えていて、本帰国と言っても、ほとんどの荷物を彼の家に置いたままでした。ですが、「じゃ、またね!」とチャンギ空港でお別れしてから1年、私たちはただの一度も会えていません。成田ではPCR検査の後、段ボールベッドで6時間待たされ、バナナとパンという1ミリもワクワクしない配給を受け、ただただ辛かったです。笑。もうこの帰国者の集いで感染するんじゃなかろうかって思ってました。

それからこの1年間は、全てをリモートで乗り切りました。日本での定住を決めたり、住処を決めたり、家具を買ったり、親への挨拶なども。

感謝すべきはインターネットとグローバリゼーション。インターネットが身近に無い時代であればこの関係を続けるのはまず不可能だったと思うし、昨今のグローバリズムにより、世界のどの都市にいても大体同じ体験ができる世の中になりました。例えば指輪は、二人でそれぞれの国に構える同じジュエリーブランドへ見に行って選ぶことができたし、新居のベッドなどは、それぞれの国のIKEAで同時刻に待ち合わせをして、二人で大きさやマットレスの好みなどを擦り合わせながら選ぶことができました。(フェイスタイムしながら、マットレス体験している私を周りのお客さんがどう見ていたかは知らない。)

ちなみに私は実家の近所でちゃっかり職を見つけてインターナショナル保育園で働いたりなんかしてました。すぐ辞めるつもりだったのにうっかり正社員で採用されちゃって、東京に戻るために辞める時苦労しました。。。雑ですみません。その後、無事に東京の会社に再就職させてもらい、(ラッキーなことに向こうから声をかけてもらった)新居も整えて、準備万端いつでも来いや!となりましたが、その後も一向に鎖国が解除されないため彼の来日目処は立たず。来日のためには学生ビザだったり就労ビザだったり配偶者ビザだったりが必要で。でも配偶者ビザ取得のために結婚するためには来日せねばならないという、無理問答の無限ループ。え、一休さんのとんちかなにかですか?謎トレですか?という訳の分からなさ。まあ、行政自体もそこまで整備がされていなかったんだと思います。それで色々調べ上げて、先日ようやくリモート結婚に至った次第です。本来外国籍のパートナーとの婚姻は、彼がまず来日し、大使館で必要な書類を発行してもらって、同席して役所に届け出るのが基本条件ですが、今回色々な手段を駆使してそれを免除してもらいました。必要書類を揃えて最初に婚姻届を出しに行ったら、コピーだけ撮られて返却されたときは絶望感でいっぱいでした。そこから1ヶ月ほど待って、「法務局が許可を出したので改めて出しにこいや、受け取ってやるぜ」という連絡を千代田区さんからありがたく頂きました。「法務局さんの気が変わらないうちに一刻も早く出しに行く!」と言う私に対して、彼が日取りを気にして提出日が決まらないというロマンチストを発揮したのには少しイラつきました。晴れて婚姻が成立し、今は一緒に日本で住むための配偶者ビザを申請しています。遠距離時代の長い我々は、お付き合いの実態を示すために、LINEのスクショを50枚、ツーショット写真を30枚くらい用意しました。あと、彼の贈ってくれたプレゼントのリストとかも全公開しました。え、プライバシーって何。ギフトの金額全部わかっちゃったし。

そんなこんなで、同居までにはもうちょっと時間がかかりそうですが、確実に一歩一歩近づいております!あれ、でも壮大なラブストーリーになるはずが、ほぼほぼ私の海外サバイバルストーリーになっちゃった笑。まあでも、シンデレラも王子様は出しろの少ない脇役だしね。ただし結末はシンデレラストーリーでも何でもないので、いささか恐縮です。でも彼は優しい人だと思います。うちのプリンスチャーミングは優しさと天然パーマが売り。プリンスカインドネスって名付けようって今思いつきました。

カインドネスが来るまでは、私はとても暇してるので皆さんいつでも独身気分で誘ってください。なんかもう夜遊びとかしたい。健全なやつ。ニューヨークで夜遊びしたいよーー。もはや何がなんだか。こんな感じですが、これからもどうぞよろしくお願いします。